口を開かない発音
■寒い地方の典型的な言葉
北国の言葉は、概して口を大きく開かなくてもいいように発音します。雪が降っているときに大きな口を開いていると、雪が口に飛び込んできます。また、北国は寒いので、口も凍えて大きく開きません。そのため、大きく口を開かなくてもいいような発音になったといわれています。真偽はともかく、一理はあると思います。
会津弁は北国の方言ですから、やはり口を大きく開かなくてもいいような発音が多くあります。その代表的な発音が「めぇ」です。
会津弁では「君」のことを「おめぇ」といいます。君はもともと人に対する敬意を表す言葉です。同じ意味の言葉に「御前(おまえ)」があります。現代語としては、君はいまでも敬意を示す言葉ですが、おまえは自分と同等かそれ以下の人に対して使う言葉になっています。この「おまえ」というときに、会津弁では「おめぇ」と発音します。
つまり、「まえ」と発音すると、大きく口を開かなくてはなりませんが、「めぇ」だと口の開きが小さくて済むからです。
しかも、会津弁では「まえ」も「まい」も同じ「めぇ」という発音になります。「家の前」は「いのめぇ」、「一枚と」は「いずめぇ」いう発音になります。
「あ」音と「い」または「え」音が続く言葉のときに、口を小さくして発音します。ですから、「まい」や「まえ」だけでなく、「かい」は「けぇ」、「たい」は「てぇ」、「ない」は「ねぇ」などとなります。
例をあげれば、「軟らかい」は「やっけぇ」、「冷たい」は「つめてぇ」などです。
あんまり「めぇ」「めぇ」いうと、羊と間違えられそうですが、これは気温と人間の生理の関係を表す言葉なのです。