■鼻濁音に近い発音
会津弁の「に」の発音はちょっと特異です。「に」は「ni」と発音しないのが基本です。もちろん「ni」と発音する場合もありますが、多くは「ni」ではありません。
どんな発音かというと、「に」と「ぬ」の中間のような発音です。ひらがなでは「ぬに」としておきますが、これは正確ではありません。アルファベットの「nnui」が近いかも知れません。つまり、鼻から息を抜きながら「nnui」と発音します。
「にもづ」(荷物)は「nnuimozu」ですし、「にすん」(ニシン)は「nnuisun」です。
会津弁で例外的に「に」と発音する代表的な言葉は、「にしゃ」(「おまえ、君」の意味)です。これはおそらく「nniusha」と発音しにくいので、「nisha」になっているのだと思われます。
日本語は、現在では「あ」「い」「う」「え」「お」の5つ母音で、すべての言葉を表すことができます。以前は「ゐ」(うぃ)、「ゑ」(うぇ)などの文字もありましたが、現在では使われていません。農機具メーカーの「井関」は古くは「ヰセキ」とという表記でしたし、「エビスビール」は「ヱビス(ゑびす)ビール」でした。こうした言葉も、もはや日本語からは消えてしまいました。これほど単純化された言語は、世界でも珍しいのではないでしょうか。
ところが、会津弁では5つ以外の母音を使った言葉がいまでも使われています。その代表的な発音が「に」なのです。