山菜採りに行こう
■熊に出会ったら
〔会津弁〕
健一「山さ山菜採り 行がねが」
誠「行ぐべ。裏山の沼のつかぐにコゴミどコスアブラ、それにぜんめぇもあっからな」
健一「しろす(宏)も誘うベ」
誠「んだな。あぎら(明)あんつぁがゆってだげんじょ、裏山で熊 見だそうだがら、行ぐどちはしとり(一人)でも多いほうがよがんべ」
健一「ゆうず(勇治)も見だそうだ」
誠「山では熊よげにラズオかけっぱなすにすておがねど危ねぇな」
健一「熊はおっかねがらな」
誠「んだげんじょ、大丈夫だ。熊のちゅうしょ(急所)は鼻だがら、襲われそうになったら鼻ぶん殴れば逃げでぐ」
健一「そのめぇにがぶりどやられながったらな」
〔日本語訳〕
健一「山に山菜採りに行かないか」
誠「行こう。裏山の沼の近くにはコゴミとコシアブラ、それにゼンマイもあるからね」
健一「宏も誘おうよ」
誠「そうだね。明さんが話していたけど、裏山で熊を見たそうだから、行くなら一人でも多いほうがいいよね」
健一「勇治も見たそうだよ」
誠「山では熊よけにラジオをかけ放しにしておかないと危ないよね」
健一「熊は怖いからね」
誠「けれども大丈夫だよ。熊の急所は鼻だから、襲われそうになったら鼻を殴れば逃げていくさ」
健一「その前にがぶりと噛みつかれなければね」
〔解説〕
春になると会津の山では山菜がたくさん採れます。ただし、山中にはツキノワグマも住んでいます。最近の熊は人間を怖がらないともいわれているので、山中ではお会いしたくないものです。
誠が話していた「あぎら(明)あんつぁ」とは、本当の兄ではありません。会津では、「〜さん」というときに、男の場合は名前の後に「あんつぁ」、女の場合は名前の後に「あね」をつけます。「敏子さん」という場合は「敏子あね」というわけです。
自分の本当の兄であれば「あんちゃ」、姉なら「あねちゃ」を、名前の後につけて呼びます。