デートの約束
■映画を見に行こう
〔会津弁〕
二郎「こんだの土曜 映画さい(行)がねが」
花子「それデートに誘ってんのが」
二郎「んだ」
花子「ずろ(二郎)よりいずろ(一郎)あんちゃのほうがいいな」
二郎「いずろ(一郎)あんちゃにはみゆぎ(美幸)さがいんべ」
花子「んだがらずろ(二郎)で我慢すろというのが」
二郎「べずに、そんなごどいってねべ」
花子「映画は何見んだ」
二郎「『君の名は。』」
花子「んだら、い(行)ってもいいがな。んだげんじょ、くれ(暗)えがらって手ぇ握ってくんでねぇよ」
二郎「そっか、かん(考)げでねがったげんじょ、映画館で手ぇ握ってもいいのが」
花子「んだがら、はずめでのデートではだめだって」
二郎「ほんじゃ、その次の土曜にまだつがう映画見さいぐべ。たのすみだな」
〔日本語訳〕
二郎「今度の土曜日に映画に行こうよ」
花子「それデートに誘ってるの?」
二郎「そうだよ」
花子「二郎よりも一郎兄さんのほうがいいな」
二郎「一郎兄さんには美幸さんがいるじゃないか」
花子「だから二郎で我慢しろというわけ?」
二郎「別に、そんなことはいっていないだろ」
花子「映画は何を見るの」
二郎「『君の名は。』」
花子「それなら、行ってもいいかな。だけど、暗いからって手を握ったりしないでよ」
二郎「そうか、考がえてなかったけど、映画館で手を握ってもいいんだ」
花子「だから、初めてのデートではだめだって」
二郎「それじゃ、その次の土曜にまた違う映画を見に行こうよ。楽しみだな」
〔解説〕
会津では兄のことを「あんちゃ」「あんつぁま」「せな(さま)」などいくつか呼び方はありますが、対等な立場の人が他人の兄を呼ぶときは「〜(誰それ)のあんちゃ」が一般的です。もちろん、自分の兄は「あんちゃ」といいます。
また、女性を敬称で呼ぶときは、名前に「さ」をつけて呼びます。この例では「美幸さ」がそれです。
なお、発音では、「みゆき」は「みゆぎ」となりますが、このときの「ぎ」はほとんど「じ」と発音します。したがって、「みゆじ」というと、会津弁らしくなります。