朝の会話
■母と子の朝の会話
〔会津弁〕
子「おはよう」
母「起ぎたが。んだら歯みがいで、顔洗ってこ」
子「ん」
母「顔さ洗ったら、早ぐまんまけぇ」
子「おがずは何?」
母「おめの好ぎなハムエッグだ」
子「弁当のおかずは何?」
母「ハンバーグどミニトマド。りんごも入れどいだ」
子「んまそうだな」
母「それより、すぐで(宿題)やったのが」
子「んーと…」
〔日本語訳〕
子「おはよう」
母「起きたの。それじゃ歯をみがいて、顔を洗ってきなさい」
子「はーい」
母「顔を洗ったら、早くご飯食べなさい」
子「おがずは何?」
母「あなたの好きなハムエッグよ」
子「弁当のおかずは何?」
母「ハンバーグとミニトマト。りんごも入れといたわ」
子「おいしそう」
母「それより、宿題はやったの?」
子「えーと…」
〔解説〕
この会話のポイントは、3つあります。
1つ目は、「起きた」「おかず」「好きな」「宿題」などの「か行」の言葉が、「起ぎだ」「おがず」「好ぎな」「すぐで」と、ことごとく濁音になることです。
2つ目は、「何(なに)」の発音です。この場合の「に」の発音は「
実践・会津弁講座〔3〕」で説明しているとおりです。
3つ目は、「ん」の使い方です。会津弁の「ん」は「う」を省略したか、「う」が「ん」に替わったということができます。同意を示す「ん」は「うん」が、「んまそうだ」は「うまそうだ」が、「んま」は「うま」が変化したものです。会津を含む東北地方は雪が降るので、大きく口を開けてしゃべると口の中に雪が入ってくるので、できるだけ口を大きく開けないでもしゃべれるように言葉が変化したという説があります。この「ん」はまさにその説のとおりで、「う」というと口を開きますが、「ん」だと口を閉じたままで発音できます。
だからといって、「う」が最初に来る言葉はすべて「ん」に置き換えられるかというと、そうではありません。「うさぎ」は「んさぎ」といいませんし、「浮き輪」も「んきわ」とはいいません。「う」を「ん」と言い換える方が例外だと思ってください。