■こづゆ 家々によって少しずつ作り方は違いますが、干し貝柱でとっただし汁で小さく切った里芋、ニンジン、キクラゲ、糸こんにゃくなどを煮て、最後に豆麩(まめふ)を入れます。できあがったら、こづゆ専用の朱塗りの椀に盛りつけます。なんと、会津にはこづゆ専用のお椀があるのです。 干し貝柱、里芋、ニンジン、キクラゲ、糸コンニャク、豆麩はこづゆといえる最小限の具材です。 家によっては、ここにダイコン、インゲン、グリーンピース、根曲がり竹、ちくわ、鶏肉などを入れることもあります。実際、わが家ではちくわと鶏肉を加えています。 |
■まんじゅうの天ぷら あんこの入ったまんじゅうに衣を付けて天ぷらにしたのがまんじゅうの天ぷらです。まんじゅうの天ぷらは会津特有の食べ物だと思っていたので、東京・神田の甘味処「竹むら」でもまんじゅうの天ぷらがメニューにあると知ったときはびっくりしました。会津では昔、天ぷらをつくるとき、まんじゅうの天ぷらは必ずつくられたような気がします。まんじゅうの天ぷらはおやつではなく、おかずとして食べられていたように記憶しています。 また、秋から冬にかけて干し柿ができると、干し柿も天ぷらにしていましたね。 ところで、会津の天ぷらで忘れてならないのがもう一つあります。それは「スルメの天ぷら」です。スルメを一昼夜流水につけて戻し、それを適当な大きさに切って天ぷらにします。生イカほど軟らかくないのですが、新鮮なイカを食べられない会津ならでは知恵です。 天ぷらで思い出したのが「かき揚げ」です。会津のかき揚げというと、タマネギとにんじんを細切りにして、そこにコウナゴなどの小魚を入れてかき揚げにしたものをいいます。タマネギの甘みにコウナゴのさくさく感が口に広がり、幸福感につつまれます。 |
■棒鱈の甘露煮 会津は太平洋側のいわきと日本海側の新潟のちょうど中間ぐらいに位置していて、その両方とも100kmほど離れています。したがって、昔は鮮魚が入ってくることはなく、海産物といえば干物、塩漬けなどにかぎられていました。 戦後しばらく経った1950年代、会津で食べられる海産物といえば、干し鱈、干し貝柱、身欠きニシン、スルメ、新巻鮭、干しわかめ、昆布、いご草(えご草)などでした。1960年代に入り、トラックによる行商が村々をまわるようになると、ようやく生魚が登場するようになりましたが、まだ刺身で食べるほど新鮮な魚はなかったように思います。 このような背景があり、会津では干し魚を加工して食べる文化が生まれました。 棒鱈の甘露煮は、棒鱈を水で戻し、それを醤油と砂糖、みりん、酒などで軟らかく煮たものです。身はもちろん、骨まで柔らかくなって、残すところなくすべて食べられます。 |
■ニシンの山椒漬け 下処理した身欠きニシンに山椒の若葉を乗せ、醤油と酢、酒、みりんで作った漬け汁で1週間ほど漬けたものがニシンの山椒漬けです。薄くスライスしてそのまま食べますが、少しあぶると香ばしくなり、酒の肴にぴったりです。ニシンの山椒漬けに使われるニシンは、身が軟らかい「ソフトニシン」などではなく、かちかちに固いもので作ります。 ニシンの山椒漬けは農水省の郷土料理百選にも選ばれています。 なお、会津には、ニシンの山椒漬けをつくるための「ニシン鉢」があります。会津美里町の会津本郷焼の窯元、宗像窯でつくられています。重量感があって本郷焼独特のうわぐすりの色がかかったニシン鉢は焼き物としても美しく、室内に置けばインテリアにもなります。 ![]() |
■そば 会津にはそばを名物と謳っている地区が数多くあり、訪れる観光客も多いと聞きます。 その火付け役となったのが、喜多方市山都町(旧山都町)の宮古地区です。宮古地区では民家が自宅をそのままそば屋として営業しています。まるで田舎の親戚の家でもてなしを受けているような気分にさせてくれ、そば粉100%のそばが食べられます。 元々、そばは会津地方全体で食べられていたものですから、旧山都町の成功を見て、ほかのところでもそばによる町おこしが始まり、いまでは、会津全体で「そば」が名物になっています。 |
■馬刺し 馬刺しというと、信州や熊本という人が多いのですが、何を隠そう会津こそ馬刺し王国なのです。会津の肉屋では必ずと行っていいほど「桜刺し(馬刺しのこと)」を扱っていますし、会津における馬刺しの本場ともいえる会津坂下町には「桜刺し」の専門店が数店あります。もちろん、スーパーマーケットの肉売り場には桜刺しの専用コーナーもあります。 会津の馬刺しの特徴は薬味にあります。店によって薬味が違いますが、すり下ろしたニンニクやしょうがで食べさせるような手抜きはしていません(きっぱり)。それぞれの店が秘伝の薬味で、桜刺しを美味しく食べさせようと工夫しています。ですから、食べる方としてもそれぞれひいきの専門店があります。 会津を訪ねたら、ぜひ、桜刺しを召し上がってみてください(食ってみてくなんしょ)。 ![]() |
■いご(えご) いごは海藻のいご草を水で煮て、とろとろになったところでバットなどの型に流してつくります。冷ましたところで食べやすい大きさに切り分けます。福岡に「おきゅうと」という食べ物がありますが、これもいご草からつくり、いごと似た食べ物です。 いごは新潟から伝わりました。いまでこそ喜多方市や会津若松市など、会津全体で食べられていますが、少し前までは西会津町や旧高郷村(現喜多方市)、旧山都町(現喜多方市)など、新潟に近い地域だけで食べられていたといわれていました。 会津では、いごは辛子醤油に漬けて食べます。いごをまったく知らなかった友人が、わが家でいごを口にして「甘くない羊羹だね」と感想を漏らしました。その後、辛子醤油で食べることを覚えてからは、いごが大好きになったようです。 いごは東京で買うことができます。JR御徒町駅近くのスーパー「吉池」の地下食品売り場に「いご練り」として売っています。お試しあれ。 ![]() |